International Non-governmental Organization PEACE.(略称:ingo PEACE./本部:東京都千代田区)は、2025年12月18日、代表使節団がミャンマー連邦共和国暫定政府との公式会談の場を持ち、「人間の尊厳」を基盤とする民主化に関する陳情書を正式に提出いたしましたので、ここにご報告申し上げます。
1. 公式会談実現までの経緯
ingo PEACE.はこれまで一貫して、民間人道支援の立場から、「人間の尊厳」を共通の基盤とし、現地社会に生きる人々の声を出発点として、対話と実践を継続してまいりました。
具体的には、世界人権宣言の精神を再確認する人権セミナー「Myanmar Human Rights Seminar 2025(Universal Values of Humanity Seminar)」の開催をはじめ、困難な状況下にある地域においても人々の声が社会から切り離されることのないよう、食料輸送ルートの確保を目的とした宗教連帯および国際連帯の推進、刑務施設における収容環境の衛生改善と人道的配慮、さらには重大刑事事件に対する無償法務支援を含む人権プロボノ活動など、現地において自ら状況を変える選択肢や手段を持たず、厳しい現実の中に置かれている人々の状況を踏まえた取り組みを重ねてまいりました。
また、2025年11月には、これらの活動を通じて形成された実務的な関係を基礎として、ミャンマー宗教界代表団を日本に招聘し、「人間の尊厳」を基盤としつつ、民主化とは誰のために進められるべきものか、またその過程において、現地で生活しながらも選択肢をほとんど持たず、状況を受け入れざるを得ない人々の声が、社会の中でどのように守られるべきかという視点を含め、意見を交わす民主化支援フォーラムを開催いたしました。
本会談は、こうした民間人道支援活動ならびに宗派・教派を超えた宗教界および市民社会との連携を通じて蓄積されてきた、現地社会の声、とりわけ現地でどうすることもできない状況に置かれた人々の現実に関する知見を背景に、暫定政府が当団体代表使節団の受け入れを正式に受諾したことにより実現したものです。
その根底には、民主化とは社会秩序を否定することではなく、社会正義として、最も弱い立場に置かれた人々の尊厳と安全を守るために、適切な社会秩序をいかに構築し、機能させていくかを問い続ける営みであるという一貫した認識があります。
2. 公式会談および陳情書の提出について
今回の公式会談は、暫定政府関係者との直接対話の機会として実施されました。代表使節団は、民主化に関する陳情書を提出するとともに、「人間の尊厳」を基盤とする社会の在り方について、これまでの人道支援活動や対話を通じて把握してきた現地住民の声、ならびに現地において選択肢を持たず、状況を変える手段を持たない人々が直面している現状への認識を共有しました。
本会談は、暫定政府 国家防衛安全保障会議の最高責任者であるアウン・リン・ドゥエ(Aung Lin Dwe) 氏との対話として行われ、代表使節団からは、民主化を進める過程において、発言力や影響力の大小によって意見が選別されるのではなく、現地でどうすることもできない、最も弱い立場に置かれている人々の視点こそが、最初に考慮されるべき基準であるとの認識を伝えました。
また、会談の中では、それぞれの立場にはそれぞれの正義が存在する一方で、その正義が他者の尊厳や自由を抑制する形で行使される場合、それは社会正義としての本来の役割を果たし得ないとの認識が共有されました。民主化の過程において求められるのは、特定の立場の正義を押し通すことではなく、社会全体の中で弱い立場にある人々が排除・抑圧されることのない社会正義の実現であるという点について、意見交換が行われました。
さらに、社会の中には、意見を表明する手段や機会を持たず、日々の不安や困難の中で祈ることによってしか思いを託すことができない人々が存在するという現実についても共有され、そうした人々の存在を包み込むことが、社会秩序の正当性を支える重要な要素であるとの認識が示されました。
3. 民主主義の尺度は、社会秩序が誰を守っているかにある
会談の中で、当団体代表理事ウン・ザー・チュンは、次のように述べました。
「社会秩序は、単に統制のために存在するものではありません。社会正義として、現地でどうすることもできない人々の尊厳と生活を守るためにこそ、秩序は必要とされるものです。それぞれに正義はありますが、その正義が弱い立場にある人々を抑制する方向に働くとき、秩序は正義を失います。社会秩序が誰を守っているのか――その点にこそ、民主主義の成熟が表れるのではないでしょうか。」
4. 今後に向けて
ingo PEACE.は、今回の公式会談および陳情書の提出を、現地住民の声を起点とし、社会正義として、最も弱い立場にある人々が排除や抑圧を受けることのない社会秩序の在り方を、今後も問い続けていくための重要な節目と位置づけています。
今後も、宗教界および国際社会との連携による平和的対話の促進と人道支援活動を通じて、声の大きさや立場の強さに左右されることなく、最も守られるべき人々の尊厳が確保される社会秩序の形成に寄与することを目指し、活動を継続してまいります。


