宗教界と共に「人間の尊厳を基盤とする社会正義」を実現する国際和平モデルへ

 International Non-governmental Organization PEACE.(略称:ingo PEACE.、本部:東京都千代田区)は、ミャンマーキリスト教会の複数宗派・教派が参画し、教会ネットワークを通じて地域社会の安定調和や紛争を抑えるための活動を進める宗教団体組織 Myanmar Christian Peace Support Central Committee(以下、MCPSCC:同団体会長は、ローマ・カトリック教会 ヤンゴン大司教、枢機卿) と、和平活動を連携推進するための包括的アライアンス契約(Strategic Alliance Agreement)を正式に締結しました。本連携の第一歩として、内戦状況下によって市中を離れ生活をしていたカヤー州の州都ロイコー市民約9万人を故郷へと帰還する共同和平プロジェクト(第一弾)を推進。

 さらに、街へ戻った子どもたち約6,000人の教育再開および付随する教育資材の支援を実施しました。この取り組みは「祈りと対話」を基盤に、宗派・教派を超え宗教界と民間社会が社会正義実現のために連帯し「未来を選択する自由」を取り戻す現実的試みであり、国際社会に向けた新たな和平モデルの誕生を告げるものです。


背景

 2025年8月27日、ingo PEACE.はヤンゴンにて、ミャンマー初の人権セミナー「Myanmar Human Rights Seminar 2025(Universal Values of Humanity Seminar)」を民間独立組織として単独開催し、「人間の尊厳と人権を未来社会の基本設計思想とする」ことを世界へ提唱いたしました。その意志への共感から生まれた「新たな連帯」による今回の共同和平プロジェクトは、宗教界と民間INGOがともに協力し停戦合意を含めた和平活動を推進する、市民社会*の再建を目指した着実な民間実践です。

*「市民社会」とは、国や権力機構とは異なり、地域住民、宗教界、民間団体、INGOなど、市民が自らの意思で社会に関わり合う連帯社会を指しています。ingo PEACE.はこの「市民社会」の一員として、政府間外交や権力による力学に依存するのでなく、人間の尊厳を基盤にした現場実践を通じて平和を推進します。

《現地・現場からの情報を届けています》

 当団体では現地にミャンマー管理本部を設置し、駐在および現地メンバーとともに直接オペレーションを進めています。様々な情報が錯綜する中にあって、当団体は現場情報に基づき活動報告を発信しています。


民間による意志と結束

 本プロジェクトは、宗教団体組織との連携のもと、相互理解を推進し、市民の故郷への帰還を可能とする活動を実践しています。内戦状況下で武力や権力ではなく、市民社会と宗教界の連携を軸に相互理解を成立させることは、人々の間に生じた分断を越え、和平行動として結束する対話の連続であり、平坦な歩みではありません。それでも本プロジェクトは「人権は誰かに与えられるものではなく、未来を選択する意思そのもの」という理念を掲げ、結果復興に向けた政府合意のもと安全を確保、内戦下で分断されていた市民が再び生活を取り戻していく具体的な一步を実現しました。


共同和平プロジェクト

 今回の共同和平プロジェクト第一弾により、カヤー州の州都ロイコーの市民約9万人が、ついに故郷へ戻りはじめました。ロイコーは州の政治・社会・宗教の中心であると同時に、内戦がはじまった当初に人々の動きが集中し、そのため戦禍の影響を最初に受けた街でもあります。現在は再建の途上にあり、地雷などの危険が残されています。しかし、そうした状況下において今回もっとも内戦下の影響を受けた市民の故郷への帰還が進められていることは、和平の現実的前進を象徴する出来事であり、希望の兆しといえます。とりわけ約6,000名の子どもたちに教育の灯が再びともされました。これに伴い、教育支援資材の手配を通じて復興再建の基盤を整え、未来への学びを保障する環境づくりが進められています。

 こうした成果は、宗教界と民間組織が協力し合うことで「平和の仕組み」を社会に実装できることを示すひとつの証明であり、単なる一地域にとどまらない、「人間の尊厳を守るために宗教界と民間が連帯する」という普遍的モデルの実証となりました。


過去から未来への橋渡し

 ingo PEACE.は、遡ること5ヶ月前 2025年4月9日、一時的停戦合意のなか、戦地から街の保護施設へ、戦争責任を問うことのできない子どもたちを避難させる国際オペレーションを実施しています。当時は安全確保の観点から、子どもたち救援に関する公表を控えましたが、この「理念に基づく行動」こそ、社会正義の実現を非武装で民間から推進する一貫した運動性を示すものです。

【動画】国際オペレーションの現地記録映像(2025年4月9日)

《関連ニュース》:ミャンマーにてPEACE. 国際オペレーションを実施(2025年4月9日)


今後の展望

 ingo PEACE.とMCPSCCは今後、カヤー州に続き他州でも市民帰還と教育再開を一步一步粘り強く実現していきます。さらに、世界の国際的人道支援団体や人権団体との協調連携を深め、対話をベースに「人間の尊厳を基盤とする社会正義」の実現を目指していきます。それは、国家や権力ではなく、市民と宗教界、そして国際社会の連帯によって未来を築く、新たな国際協力モデルへの取り組みでもあります。

 当団体は「平和とは最も弱い立場の人が安心して暮らせる状態である」という理念のもと、国家や権力の論理を超え、宗派・教派を超えた宗教界と市民の連帯をつなぐ橋渡し役として活動を続けます。

小さな一歩が、やがて社会を動かす。

 私たちが築こうとしているのは、誰かが勝ち、誰かが負ける社会ではなく、すべての生命が共に安心して暮らせる共生社会です。

 本プロジェクトは、国境を越えて共感と行動を結ぶ「Hope Alliance」プロジェクトの実践の一部であり、いま人類全体は共生益を分かち合う新しい文明の転換点に立っています。

 社会には多様な正義が語られます。しかし、人々を分断し、困窮させるような“正義”は決して社会正義とは呼べないはずです。私どもは社会正義とは、弱い立場の人々を守り、誰も取り残さない仕組みの中にこそ宿ると考えています。

 だからこそ私たちは、どちらが正義かを問う闘争ではなく、社会正義を共通基盤に据えて連帯を深めていきます。多様な意見を抱える世界の中で、この試みの本質に共感する皆さまとともに歩むことが、未来を築く第一歩と考えています。私たちは、すべての生命が安心して暮らせる新たな共生型社会モデル創造の試みを、これからも続けてまいります。


●Myanmar Christian Peace Support Central Committee(MCPSCC)について

 Myanmar Christian Peace Support Central Committee(MCPSCC)は、ミャンマー国内の主要なキリスト教団体によって構成された宗教団体組織です。加盟団体は、ミャンマー教会評議会(MCC)、ミャンマー・カトリック司教協議会(CBCM)、ミャンマー福音キリスト教同盟(MECA)、ミャンマー・キリスト宣教協力委員会、セブンスデー・アドベンチスト教会の5団体であり、幅広い宗派・教派を横断して連携しています。

 MCPSCCは、各地の教会ネットワークを通じて、地域社会における調和と安定の促進、保健医療や教育に関する啓発、災害時の支援活動などを展開しており、市民生活の改善と復興に寄与しています。また、内戦や社会不安の中で市民を保護し、対話を仲介する活動を続けており、国民の声を伝える重要な役割も担っています。

 国際的にも、MCPSCCは世界福音同盟(WEA)や世界教会協議会(WCC)をはじめとする国際ネットワークや、国連機関・各国NGOとも協力関係を築いており、宗派・教派を超え市民社会の平和と安定を支えるパートナー組織です。